[読] 図解 葉隠 勤め人としての心意気

戦国時代が終わり、組織に所属する奉公人として多大なストレスにさらされながら、割り振られた仕事に取り組まねばならなかった武士にとって、「この世にどのように処してていくのか」を説いた書籍です。江戸時代中期の佐賀の鍋島藩士で、のちに出家した山本常朝が武士としての心得を語ったものです。

武道を修めつつも「葉隠れ」を1回も読んだことがなかったので、新聞の書評欄で、「武士の生き方は、現代のサラリーマンに通じるものがある」といったことが書かれていたのをきっかけに読んでみました。

筆者の斎藤孝さんは、「勤め人としての心意気」を懇切丁寧にアドバイスしている点に注目して「葉隠れ」を紐解きました。組織に所属して働き、気の進まぬ仕事も引き受けなければならず、簡単に辞めるわけにもいかない武士というのは、まさにサラリーマンそのものです。「非常の武士道」ではなく「平常の奉公道」を伝えようとした点に、広く一般の社会人に向けてのメッセージ性が読み取れます。

第1章 心地よく生きる術では、ぼんやり生きずにしっかり考えをもってチャレンジすることを説いています。「武士たるものが武士道を心掛けねばならぬということは、取り立てて言うほどのことでもないが、すべての人に油断があるように思う」というくだりがあります。姿勢ひとつとっても剣道の時だけ姿勢を良くしようとしてもダメで、常日頃から意識しておき、それが無意識にできている状態にならなければ本物ではありません。また、日ごろから自分のやっていることについて考えていれば、何かを聞かれたときにも即座に答えられるはずでしょう。ここに書かれている通りに考え、日ごろ仕事に励んではいるものの、あらためて自分がまっとうできているかというと心もとないものです。私自身、心地よく生きる術は知っていますが、知っている術を実践することが本当に難しいことだとつくづく思います。

第二章、大人としてのたしなみでは、「智(前頭葉:正しい判断力)」「仁(胸:まごころ)」「勇(へそ下丹田:勇気と行動力)」を兼ね備えてバランスのとれた生き方をしようと説きます。

「四十より内は強みたるがよし。五十に及ぶ頃はおとなしくなりたるが相応なり」というくだりがあり、四十代のギアチェンジについて書かれていました。葉隠れの時代の四十代と現代の四十代は、かなり異なるようにも思いますが、年齢と体力に合った仕事をペースを変え、質を変え、取り組み方を変えてギアチェンジしながらやっていく必要性については、その通りだと思います。

第三章、勝つための仕事術では、より現代サラリーマンに身近な話題に触れています。

一流の人ほど精進する。
仕事を断らない人は伸びる。
早い決断は仕事を制す。
他人を巻き込む勢いが大事。
調べて確認を習慣に。
上司とのコミュニケーション(相手の気質を良く見極める)


一流の人ほど精進する。
仕事を断らない人は伸びる。
早い決断は仕事を制す。
他人を巻き込む勢いが大事。
調べて確認を習慣に。
上司とのコミュニケーション(相手の気質を良く見極める)

  • 一流の人ほど精進する。
  • 仕事を断らない人は伸びる。
  • 早い決断は仕事を制す。
  • 他人を巻き込む勢いが大事。
  • 調べて確認を習慣に。
  • 上司とのコミュニケーション(相手の気質を良く見極める)。

などなど、ここら辺までは共感できたのですが、最期の部分は考えさせられてしまいました。「所属先があるということが個性の発揮につながる」として、安易な転職を諫め、覚悟を決めてここにいるのだという気持ちが大切だと説いています。そして、

  • 心身を擲ってただひたすらに主君が大事と思い続けることなのだ

チームについて本気で考えていれば、油断やケアレスミスもなくなるといいます。その通りだと思います。しかし、ここ最近の自分の周囲の変化を見ていると、果たしてこのままでよいのだろうかと思うことが多すぎます。

そう思って第四章、リーダーの条件を見ると、残念ながらリーダーの条件に合わない者のなんと多いことかと嘆かわしく思ってしまいました。主君が間違った方向に行こうとするとき、身を賭してでも間違った方向を正すこともまた”忠”なのではないかと考えてしまいます。少なくとも自分は、正しいリーダー像でありたいと思います。

  • 上司の心得:大きな事でも小さなことでも十分にその内容を知っていて、そのうえでこれを人に任せ、口を出さずにそれぞれの係にやらせる。
  • 指示は明確に、そして繰り返し伝える:できるようになるまで根気よく
  • さりげなく具体的にほめる。いつも気にかけているというサインを送る。
  • 努力を誉める⇒安心させる⇒一歩先のイメージを伝える
  • 部下にこそ親切に、丁寧に。
  • 意見をする時こそ慎重に。相手に恥をかかせない。
  • いつも気持ちは一定に、どっしりと構える。
  • 正しい評価の仕方:何を主文に伝えるか

特に、評価の主文をどうするかについては、細かいようだが重要なことだと思います。主君の質問「鷹師は役に立つか?」に対して、1.日ごろ行いは悪いが鷹師として右に並ぶ者はいないと答えるか、2.鷹師として優秀だが、日ごろの行いが悪くて使えないというかは、主文がどちらになっているかが大きく違います。当然、前者の方が問われていることに対して答えており、正解です。

第五章、人付き合いの極意では、もはや当たり前のことしか書かれていませんが、これらの言葉が武士の生き方とつなげられて語られると、妙に説得力があるのです。

本書籍全体を通じて読みやすい文章で書かれていますので、あっという間に読み切ってしまいました。葉隠れの原著への入り口としても読みやすく、現代を生きる勤め人としての生き方の参考になる書籍でした。

戦国時代が終わり、組織に所属する奉公人として多大なストレスにさらされながら、割り振られた仕事に取り組まねばならなかった武士にとって、「この世にどのように処してていくのか」を説いた書籍です。江戸時代中期の佐賀の鍋島藩士で、のちに出家した山本常朝が武士としての心得を語ったものです。

武道を修めつつも「葉隠れ」を1回も読んだことがなかったので、新聞の書評欄で、「武士の生き方は、現代のサラリーマンに通じるものがある」といったことが書かれていたのをきっかけに読んでみました。

筆者の斎藤孝さんは、「勤め人としての心意気」を懇切丁寧にアドバイスしている点に注目して「葉隠れ」を紐解きました。組織に所属して働き、気の進まぬ仕事も引き受けなければならず、簡単に辞めるわけにもいかない武士というのは、まさにサラリーマンそのものです。「非常の武士道」ではなく「平常の奉公道」を伝えようとした点に、広く一般の社会人に向けてのメッセージ性が読み取れます。

第1章 心地よく生きる術では、ぼんやり生きずにしっかり考えをもってチャレンジすることを説いています。「武士たるものが武士道を心掛けねばならぬということは、取り立てて言うほどのことでもないが、すべての人に油断があるように思う」というくだりがあります。姿勢ひとつとっても剣道の時だけ姿勢を良くしようとしてもダメで、常日頃から意識しておき、それが無意識にできている状態にならなければ本物ではありません。また、日ごろから自分のやっていることについて考えていれば、何かを聞かれたときにも即座に答えられるはずでしょう。ここに書かれている通りに考え、日ごろ仕事に励んではいるものの、あらためて自分がまっとうできているかというと心もとないものです。私自身、心地よく生きる術は知っていますが、知っている術を実践することが本当に難しいことだとつくづく思います。

第二章、大人としてのたしなみでは、「智(前頭葉:正しい判断力)」「仁(胸:まごころ)」「勇(へそ下丹田:勇気と行動力)」を兼ね備えてバランスのとれた生き方をしようと説きます。

「四十より内は強みたるがよし。五十に及ぶ頃はおとなしくなりたるが相応なり」というくだりがあり、四十代のギアチェンジについて書かれていました。葉隠れの時代の四十代と現代の四十代は、かなり異なるようにも思いますが、年齢と体力に合った仕事をペースを変え、質を変え、取り組み方を変えてギアチェンジしながらやっていく必要性については、その通りだと思います。

第三章、勝つための仕事術では、より現代サラリーマンに身近な話題に触れています。

  • 一流の人ほど精進する。
  • 仕事を断らない人は伸びる。
  • 早い決断は仕事を制す。
  • 他人を巻き込む勢いが大事。
  • 調べて確認を習慣に。
  • 上司とのコミュニケーション(相手の気質を良く見極める)。

などなど、ここら辺までは共感できたのですが、最期の部分は考えさせられてしまいました。「所属先があるということが個性の発揮につながる」として、安易な転職を諫め、覚悟を決めてここにいるのだという気持ちが大切だと説いています。そして、

  • 心身を擲ってただひたすらに主君が大事と思い続けることなのだ

チームについて本気で考えていれば、油断やケアレスミスもなくなるといいます。その通りだと思います。しかし、ここ最近の自分の周囲の変化を見ていると、果たしてこのままでよいのだろうかと思うことが多すぎます。

そう思って第四章、リーダーの条件を見ると、残念ながらリーダーの条件に合わない者のなんと多いことかと嘆かわしく思ってしまいました。主君が間違った方向に行こうとするとき、身を賭してでも間違った方向を正すこともまた”忠”なのではないかと考えてしまいます。少なくとも自分は、正しいリーダー像でありたいと思います。

  • 上司の心得:大きな事でも小さなことでも十分にその内容を知っていて、そのうえでこれを人に任せ、口を出さずにそれぞれの係にやらせる。
  • 指示は明確に、そして繰り返し伝える:できるようになるまで根気よく
  • さりげなく具体的にほめる。いつも気にかけているというサインを送る。
  • 努力を誉める⇒安心させる⇒一歩先のイメージを伝える
  • 部下にこそ親切に、丁寧に。
  • 意見をする時こそ慎重に。相手に恥をかかせない。
  • いつも気持ちは一定に、どっしりと構える。
  • 正しい評価の仕方:何を主文に伝えるか

特に、評価の主文をどうするかについては、細かいようだが重要なことだと思います。主君の質問「鷹師は役に立つか?」に対して、1.日ごろ行いは悪いが鷹師として右に並ぶ者はいないと答えるか、2.鷹師として優秀だが、日ごろの行いが悪くて使えないというかは、主文がどちらになっているかが大きく違います。当然、前者の方が問われていることに対して答えており、正解です。

第五章、人付き合いの極意では、もはや当たり前のことしか書かれていませんが、これらの言葉が武士の生き方とつなげられて語られると、妙に説得力があるのです。

本書籍全体を通じて読みやすい文章で書かれていますので、あっという間に読み切ってしまいました。葉隠れの原著への入り口としても読みやすく、現代を生きる勤め人としての生き方の参考になる書籍でした。

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